詐欺的商法の発生経緯
平成17年7月1日に改正金融先物取引法が施行され、
外国為替証拠金取引は全面的に同法の規制対象となり、
現在は平成18年6月1日成立の金融商品取引法に引き継がれ同法の規制対等となりました。
前記金融先物取引法は、
外国為替証拠金取引等の金融先物取引業者の登録制を採用したことから
(同法56条。金融商品取引法になってからは、同法29条)、
悪質業者が多数含まれていた独立系外国為替証拠金取引業者の多くが平成17年末までに消滅し、
被害件数は顕著に低下していきました。
しかし、悪質業者は、新たな悪徳商法を模索しました。
このうちの一つは、前記の未公開株式商法です。
ロコ・ロンドン貴金属取引
その他の悪徳商法として、まず、目立ったのは、「ロコ・ロンドン貴金属取引」でした。
ロコ・ロンドンというのは、本来の意味は、英国のロンドンで、金を受け渡す条件の価格のことです。
金現物市場の中で、世界の取引の中心となっているのがロコ・ロンドン取引で、
ロコ・ロンドン市場は、ロコ・ロンドンを基準とした相対のスポット市場です。
しかし、ここでいうロコ・ロンドン貴金属取引とは、ロコ・ロンドンの名称のみを借りた詐欺的商法です。
ロコ・ロンドン貴金属取引といっても、 業者と顧客(被害者)の一対一の相対取引(あいたいとりひき)であり、市場は関係ありません。
要は、パチンコ屋さんでパチンコを行っているのと同じで、
客が利益を得ればパチンコ屋さんが損失となり、
パチンコ屋さんが利益を得れば客が損失となるというものです。
ただ、パチンコ屋さんと違うのは、その構造がわかりづらいことです。
ほとんどの人は、ロコ・ロンドンについて、その業者を通じ、
市場で取引を行っていると考えているのではないでしょうか。
しかし、実際は、その業者と、一対一で取引を行っているのです。
しかし、業者は、ロコ・ロンドン市場での貴金属の値段を指標として、
取引を行うと称していました。
つまり、その業者と顧客(被害者)の間で、
特定日時の特定商品のロコ・ロンドン市場の値段を前提に証拠金取引(しょうこきんとりひき)を
行うというものでした。
ここで証拠金取引とは、業者に、少額の証拠金等を出すことにより、
多額の取引を行うことができる取引のことです。
この証拠金の取引は、儲かった時は、多額の利益がでることになりますが、
逆に、損が出たときは、多額の損害となります。
この特徴を、レバレッジ(てこ)の原理といいますが、
とりあえず、このレバレッジの原理のことだけに限定して設例で説明します。
Aという現在100万円の商品1個を、1ヶ月後(期限)に必ず売却しなければならないという前提で、
10倍の倍率の証拠金取引で購入を行う場合を考えます(簡単にするため、手数料、消費税等は考えません)。
10倍の倍率の証拠金取引ですので、証拠金10万円を出せば、
現時点で、100万円のAを購入することができます。
仮に、1ヶ月後、Aの値段が上がり、価格が110万円になっていたとすると、
Aは100万円で購入したAを110万円で売ることができることになり、
(証拠金)10万円で、10万円の利益を得ることができることになります。
しかし、1ヶ月後、Aが90万円になっていたとすると、
Aは、100万円で購入した商品を90万円で、売却しなければならなくなり、
10万円の損害ということになってしまいます。
倍率が大きくなればなるほど、レバレッジ(てこ)の原理が強く働き、
利益も損失もより大きくなります。
また、このような証拠金取引は、「差金決済取引」(さきんけっさいとりひき)を
その内容として含みます。
差金決済取引とは、総代金ではなく、差額分のみで決済を行う取引のことです。
前記のA商品の例で、仮に差額決済取引でなく、
現金の決済で取引を行うとするとAという商品を100万円で、購入し110万円で売るとすると、
決済時、100万円の現金を支払い、110万円の代金を受け取ることになりますが、
これでは、証拠金取引の意味がありません。
差引金額である10万円のみを受け取ることで、決済を行うのです。
「ロコ・ロンドン貴金属取引」の基本的な内容は、
取引単位や証拠金金額・証拠金率が業者ごとに異なりますが、
「先物取引被害救済の手引〔九訂版〕86頁以下」によれば、
「すなわち、顧客は、業者に対して、ロンドン渡しの金現物100トロイオンス
(1トロイオンス=31.1035グラム)を1取引単位とする最低取引単位あたり50万円の
「保証金」を支払ってロンドン渡しの金を売買したと同様の(差金決済を行う)地位を取得し、
任意の時点で当該地位(ポジション)と反対の取引をすることによって生ずる
観念上の差損益について差金の授受を行う。
また、顧客は、取引を行うことにより、いかなる理由に基づくものかは不明であるが、
1単位あたり1日数百円の「スワップ」と称する「金利」を得ることができる。」
とされています。
一対一の取引で、何らの規制もなく、悪質業者が行っていたものですから、 差金決済取引の基準となる「ロンドン渡しの金」の価格は、 業者が勝手に設定し、さらに、取引のための「為替レート」等も業者が勝手に設定したものでした。
このような取引について、規制が全くなく、多大な被害が生じたことから、
法律の改正ではなく、迅速にできる政令(内閣が出す命令)で、
平成19年(2007年)7月15日より、「特定商取引に関する法律」の
特定継続的役務提供に指定されることとなり、同法の規制対象となりました。
これによって、ロコ・ロンドン貴金属取引は同法の書面交付義務、
ク-リング・オフなどの対象になりました。
また、裁判所の判断でも(東京高等裁判所平成20年3月27日外)、 このようないわゆるロコ・ロンドン取引が違法なものであることが認定されていきました。
貴金属スポット取引等・詐欺的CFD取引
このように、特定商取引法に関する法律の適用、その他マスコミの影響により、
ロコ・ロンドン貴金属取引が一般の人にも悪質取引であることが知れ渡ってきたことから、
悪質業者は、「貴金属スポット取引」と実質は同じながら、
名称を変更するものが続出するようになりました。
さらに、その後、この「貴金属スポット取引」の悪名が高くなると、
今度は、「CFD取引」との名称を使い出す業者がでてくるようになりました。
CFD取引(Contract For Difference)とは、差額決済契約を意味します。
差額決済自体は、総代金ではなく、差額分のみで決済を行う取引のことです。
現金の決済で取引を行うとするとAという商品を100万円で、
購入し110万円で売るとすると、決済時、100万円の現金を支払い、
110万円の代金を受け取ることになりますが、
これでは、無意味に決済が煩雑になることから差引金額である10万円のみを受け取ることで、
決済を行うのが通常ですが、このような決済方法を差額決済といいます。
このような差額決済は、通常でも行われていますが、
金融商品の分野では、金だけでなく他の商品の価格を利用して
差金決済をするものをCFD取引と呼ぶことから、
この「CFD取引」の名称を使用し、実質、ロコ・ロンドン貴金属取引、
貴金属スポット取引と同じことを行う業差が出てきました。
詐欺的CFD取引等に対する法規制
これらの詐欺的CFD取引は、いわゆる店頭デリバティブ取引と呼ばれる取引に該当し、 これまで規制らしい規制がなく、わずかに訪問販売・電話勧誘販売の方法で販売されたときだけ、 特定商取引に関する法律の役務提供として、 クーリングオフや取消権の規定などの適用が認められていました。
しかし、これらの取引も、平成23年1月1日から施行された 改正商品取引所法(商品先物取引法)の適用対象となることから、 激減することが期待されています。
ただ、今後も、被害は続くと考えられます。怪しいと思ったら、すぐに当事務所にご相談下さい。
金融商品被害にあわれた方へ
当事務所は、金融商品により、個人の方、企業に生じた被害を回復することを行う、金融商品トラブル対応の経験豊富な法律事務所です。
いますぐ金融商品被害の問題解決のため、当事務所にご相談下さい。
金融商品被害のご相談は、電話番号 03-3511-5801 まで今すぐお電話ください。