先物取引の危険性
先物取引(国内公設・海外)はどのような点で危険なのでしょうか。
とはいっても、詐欺で、取引の実体がないのに勧誘する業者は、犯罪ですし、このような業者に
被害の損害賠償請求ができることは当然ですので、下記の内容は、正規の業者が扱う先物取引
であることが前提です。
てこ(レバレッジ)の原理の危険性
先物取引は、差金決済による証拠金等の取引です。
このシステムは、少額の証拠金等を出すことにより、多額の取引を行うことができ、
儲かった時は多額の利益がでることになりますが、逆に、損が出たときは、多額の損害となります。
そして、儲かることがほとんどないことは、後で述べるとおりです。
このレバレッジのことだけに限定して設例で説明します。
Aという、現在100万円の商品1個を、1ヶ月後(期限)に必ず売却しなければならない(差金決済) という前提で、10倍の倍率の証拠金取引で購入を行う場合を考えます。 (簡単にするため、手数料、消費税等は考えません)
10倍の倍率の証拠金取引ですので、証拠金10万円を出せば、現時点で、100万円のAを購入することができます。
仮に、1ヶ月後、Aの値段が上がり、価格が110万円になっていたとすると、Aは100万円で購入したAを
110万円で売ることができることになり、(証拠金)10万円で、10万円の利益を得ることができることになります。
しかし、1ヶ月後、Aが90万円になっていたとすると、Aは、100万円で購入した商品を90万円で、
売却しなければならなくなり、10万円の損害ということになってしまいます。
なお、この例は、レバレッジのイメージをつかんでもらうためのものですので、不正確な部分もありますので、 ご了承下さい。
市場全体の利益と損失が同一であり、かつ手数料・消費税等が控除されること
たとえば、国内公設の先物取引の場合、東京工業品取引所等の市場で、取引が行われることになります。
市場取引である以上、儲ける人がいれば、損をいる人がいるのであって、業者の手数料等を考慮しなければ、
ゼロサム、すなわち、市場全体では、損と得は差し引きゼロになるはずです。
そこで、これだけを考えても、利益が得られる確率は、2回に1回となります。
しかし、これらの取引を行うためには、金融商品を取り扱う業者に手数料を支払わなければなりませんし、
消費税も払わなければなりません。
そこで、これらの手数料等の金額以上の売買益が生じないと、これらの金融商品(取引)での利益が生じないこと
になります。
したがって、単純な確率論で考えても、利益が生じるのは、3回から4回の取引に1回ということになります。
しかも、これのみならず、後記の相場の予想の困難等があります。
相場の予想の困難
先物取引を行うためにはその商品の価格の変動を的確に予測する必要があり、そのためには、右市場価格を決定する 経済的・政治的・社会的諸要因を調査・把握することが必要ですが、その調査・把握は、一般の方にとっては、 大変困難です。
また、その予測は、その金融商品(取引)が行われる限り、継続的かつすばやく行わなければなりません。
賭博である「競馬」の予測は投票の締め切りと同時に終了するのと比較し、これらの金融商品の場合には、 取引を終了するまで、予測と判断を継続して行わなければならず、 また、しばしばその判断をすぐに行うことを求められるのであり、これは、一般の方にとっては、極めて困難なことです。
このように先物等の金融商品(取引)で、一般の方が利益を出そうとすることは、極めて難しいことです。
まとめ
このように先物取引で利益を得ることは著しく困難です。
先物取引で利益を得られる確率について、旧全商連理事・旧日商協理事等を努めた木原大輔氏は、
その著作「新時代の商品先物取引」210頁において、『成功と失敗が五分五分としても、この間に売買手数料が
とられるので、その分だけはマイナスになるはずで、また、相場の特性と人間の弱さの特質というのか、
一般的に「儲けのときは、早く利を入れ、損の時にはねばって大きく引かされる(利食いが早く、損切りが遅い)ので、
結果として大損をする傾向にある。
したがって「見切り千両などという格言が生きてくる。
その損・得の割合は、統計上では、だいたい八対二から七対三の比率とされている』としています。
すなわち、手数料を払っても利益がでるのは、4人の内1人位に過ぎないとしています。
しかしながら、上記は、投機の専門家も含めた数値です。
元国民生活センター調査部長の加藤敬氏が、旧社団法人日本商品取引員協会第1回経営幹部セミナーにおいて
語られたところによると
「一般の素人は七対三とか七五対二五よりもっと損する確率が高く、利益を得る確率はもっと少ない」
とのことであり,さらに他の要素も含めると
「素人にとって利益を得る確率は益々ゼロに近くなっていき、損をする確率はほとんど100パーセントといっても
過言ではない」
『先物取引の危険性は、山登りに例えるならヒマラヤやマッターホルンの登山だと思います。
「損をすることもある」くらいのことでは、取引の危険性を正しく説明したことにはならない』
ことになるとのことです。
これらの話を前提にすると、先物取引で,素人が最終的に利益を得ることはほとんどあり得ないとさえ言いうる ことになります。
先物取引とは
先物取引の危険性
先物取引用語集
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